主に描かれたこと
- ショウマとランゴの決着
- 絆斗とジープ&リゼルの対決
- ラキアによる人間世界とグラニュート世界の遮断
- マサルがショウマが甥である事に勘付いた。
残された課題
- 独り遺されたリゼル
- グラニュート世界における新大統領
- 人間世界に取り残された元闇バイト
- マサルさんがショウマを甥っ子として改めて迎えること
- ブーシュが「ランゴに恨まれた理由」が曖昧
絆斗の集大成
絆斗VSジープ&リゼルは予告段階では「特に因縁がないじゃん…」と感じましたが、想像以上に見応えある内容でした。復讐に固執するリゼルと彼女を宥めるジープを前にして、絆斗は「お前らはこのままグラニュート世界に帰れ」と戦わない選択肢を提示します。
この選択肢を提示できるのは絆斗だけだったと思うんですよね。ショウマはまだしもラキアに関してはリアリストな性格が目立つので淡々と戦う展開になっていたでしょうし。
これまで絆斗は「仇」と言える3つの存在と邂逅して来ましたが、そのうち撃破できたのは1人だけです。初期の酸賀さんに関しては自身の手で葬ることに成功していますが、終盤で再登場・自身を洗脳までされた際のトドメはラキアに譲っています。
そして何より重大な「母を拉致した怪人」に関しては既に悪事から足を洗った存在であり、復讐しようにも出来ない状況下で彼を見逃す事になりました。しかし結局は善良になった怪人も、別の怪人に粛清されてしまい、絆斗の「復讐を諦めた見逃し」が無碍にされてしまう展開となりました。
客観的な状況としては悲惨で救われない絆斗ですが、実態としては心身ともに強く成熟していきます。一時は心が折れかけたり、危険な力に頼ったこともありましたが身近で支えてくれた「ショウマ」や仲間たちと過ごす中で「復讐への執着」から脱していきます。
「復讐から脱した絆斗」という人間性は既に描かれており、それは同じく「復讐に固執していたラキアに寄り添う場面」や「再登場した酸賀による洗脳を自力で克服した場面」で強く印象付けられています。
そんな絆斗だからこそ「リゼルに寄り添おうとするジープ」を見て「かつての絆斗と寄り添うショウマ」を重ねたのではないでしょうか。その上で「寄り添う存在がいるなら更生できるかもしれない」という期待を抱いたのかもしれません。
結果的に戦闘を避けることは出来ず、ジープを殺害することになってしまいましたが、その後に絆斗が見せた哀しそうな表情が何とも切なかったです。でも誰よりもこの表情に説得力を持たせるキャラは絆斗しかおらず、彼が『ガヴ』という作品で魅せた活躍の集大成に相応しい展開だったと思います。
ジープの散り際は綺麗だった
綺麗にシータとリゼルへの気持ちを両立させた末路でしたね。「かつてのシータのように、リゼルを庇って死ぬ」という行為は「愛する者(リゼル)ができた」と「自分がシータに愛されていた」を同時に意味しますから。
そして2人への気持ちを両立させた上で「最後に選んだのがシータだった」というのも解釈一致ではあります。結局リゼルは「あなたは最後まで私の”モノ”だって…」と嘆いており、あくまで「モノ扱い」からは脱していません。
ただそうなるとジープがリゼルを支えようとした理由が不明確なんですよね。ここ最近だと「ニエルブが自身に期待してなかった」ことや「父を失ったリゼルに同情した」ことをキッカケに吹っ切れたような印象もありましたが、実際はどうなんでしょうね。
だとすれば「ストマック家と訣別してリゼルと生きていく」決断をしても良い気がしますが、結局は「ヒトプレス奪取の阻止=ランゴへの協力」という形で絆斗との対決に発展してますし。
ジープの場合は「家族に認められたい」という承認欲求という要素もありましたが、これを踏まえると綺麗に解釈できるかもしれません。
「愛するリゼルや家族のために最後まで奔走し、その想いを最愛のシータが承認して迎えに来てくれた」という解釈も出来ますし「自身の分身たるシータと同じ末路を辿ることによって真の意味で一緒になれた」という解釈でも綺麗です。
ランゴ兄さんに関してはもう一声欲しかった
まず基本フォームでトドメを刺した展開については違和感なく受け入れられました。アレは序盤のオーバーマスターから始まる各種フォームを含めた総力戦であって、あくまでトドメが基本フォームだったに過ぎないと解釈しています。
また「誰かを幸せにする人間世界のお菓子」を知ったショウマと「多くの人や怪人までもを不幸にする闇菓子」しか知らないランゴという対比も綺麗でした。
ショウマが発した「ランゴ兄さんも被害者なんだ」という言葉がそれを象徴していたように感じます。その上で決め台詞である「闇菓子から手をひくか、俺に倒されるか」を提示する流れも、これまでの経緯やショウマの願望を読み取れて深みがありました。
ランゴ撃破後にショウマの大好きなグミを手向けた場面や「人間もグラニュートも喜べるお菓子を作りたい」という展望からも、本気で「ランゴと一緒にお菓子を食べたかった」のではないかと思わされます。
そんな健気なショウマとは対照的に「ランゴが闇菓子に固執する理由」があんまり伝わって来ませんでした。判明している情報としては「父であるブーシュが無能だったからランゴが殺した」であり、加えて今回で「ランゴの輝かしい未来が奪われた」という発言が追加されました。
もちろん(人間と再婚した関係で)何かしらのトラブルがあったであろうことは間違い無いのですが描写が抽象的すぎてイメージしにくい…。
それだけ生々しくてエグいことをされたという解釈で良いんだとは思いますが、もう少し情報を開示してくれない事には「ただ頑固なやつ」としてランゴを見てしまいます。
どうなるVシネ
最終回の中である程度は綺麗にまとめ上げた感はありますが、やはり「Vシネ前提」な雰囲気は感じるところではあります。かなり露骨だったか(笑)。
内容としては記事冒頭に書いたように
- 独り遺されたリゼル
- グラニュート世界における新大統領
- 人間世界に取り残された元闇バイト
- マサルさんがショウマを甥っ子として改めて迎えること
- ブーシュが「ランゴに恨まれた理由」が曖昧
というテーマに絞られそうではあります。
①~④は間違いなく描くでしょうね。全く触れもしなかったらもうビックリですよ(笑)。
ただ⑤に関してはこのまま迷宮入りなのかなぁ。個人的には『ガヴ』の前日談にはすごく興味があるので是非見てみたいです。
いっそのこと「酸賀さんが倫理観を喪失するキッカケとなった『酸賀の妻が変身するプロトヴァレン』のエピソード」とかやりませんか?
まとめ
48~49話にかけて一気に雲行きが怪しくなっていた『ガヴ』ですが、最終回である程度は綺麗にまとめ上げてきた印象はあります。少なくとも「雑に処理した」と感じる要素は少なく、全体として「丁寧さ」や「意図」は感じさせる展開だったと思います。
作品としての総括ですが、非常に出来が良い作品だったと思います。主人公たちの心情描写や魅力的な悪役たち、その全てを振り回す「闇菓子」の罪深さ、新鮮味のあるアクションシーン、改造人間という原点回帰要素といった具合で非常に見応えがありました。
それだけに終盤の駆け足感だけが少し惜しかった印象も否めないです。リゼルは意図的にVシネに残したようなので仕方ないにしても「ニエルブの末路」や「ブーシュの功罪」といったテーマはもっと丁寧に描いて欲しかった感はあります。
特にダークショウマの繰り返しや謎に登場したマーゲンさんの尺はもっと上手く使えただろうに…とは思ってしまいますし。
まぁ1年もかけて放送する都合上、多少は粗も見えてしまうのは仕方のないことですし、その中でも「ただの子供騙しではない」見応えある作品を提供してくださった製作陣にまずは感謝です。
本当に近年の作品として最高傑作であることは間違いなく、毎週日曜日の「ニチアサ」がこんなに楽しみに感じたのは久しぶりです。
当ブログを始めたキッカケも「ガヴが面白過ぎてライダー愛が復活したから」であり、色々な意味で思い入れがあり過ぎます。
来る『ゼッツ』も楽しみですし、Vシネクストは絶対に見にいきます!少々ガヴロスではありますが今後も続くであろうライダーの歴史を味わっていきたいものです。
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