注意!!
この記事はガヴ第45話の感想と考察を扱う内容ですが、一部で劇場版ガヴ『お菓子の家の侵略者』の内容にも触れています。ネタバレの危険性があるので映画未視聴の方はご注意ください。
主に描かれたこと
- ショウマ母の死~ショウマが人間界に来るまでの経緯
- ラキアの罪と幸果の気持ち
ニエルブの手助けでショウマは人間界に来れた
まさに第1話にてストマック界で母を殺されてから人間界に逃げて来たショウマですが、実は時系列に若干のラグがあったことが判明しました。当初の描写だと連続した出来事のように見えましたので、少し意外でした。実際は以下の通りです。
- ストマック家が、ショウマと母の二人をヒトプレスにしようと試みる。
- 母だけが死亡。ショウマは赤ガヴの能力で事なきを得る。
- その後、生存したショウマは別室で監禁。(今回で新たに判明)
- ニエルブがショウマの脱出を手助け。
- 異世界に通じる扉の空間にショウマが到達、人間界へ。(第1話に繋がる)
通常、人間はグラニュートの舌に巻かれるとヒトプレスという形に封印されてしまい、これが敵組織の手に渡ると実質的な死亡となる設定となりますが、ショウマは舌で巻かれても封印されませんでした。ニエルブはこの現象を「赤ガヴによるもの」と推測しており、この赤ガヴがどのような進化を遂げるのかに興味を持ちました。
そこでニエルブはショウマの脱出を間接的に手助けし、結果としてショウマが人間界でライダーとして覚醒し強くなっていくキッカケを作りました。
ニエルブはストマック家を愛している?
人間界で強くなったショウマと手を組むために、ニエルブは交渉を持ちかけます。ニエルブの狙いはあくまでも「ストマック家の繁栄とグラニュート世界の支配」であり、闇菓子は手段に過ぎず、人間を襲う事にさほど拘りはないという気持ちを語るニエルブ。
ニエルブの本心は「ストマック家を愛している」という事であり、繁栄するなら手段は問わないというのが彼のスタンスのようです。現時点でのストマック家は大統領に支配された状態であり、これを何とか奪還したいという気持ちは本当なのかもしれません。
ただしニエルブの愛情は「誰にも信じてもらえなかった」という発言は少し気になる要素ではあります。これはやはりニエルブ側に嘘があって他の兄妹が勘付いていたことを意味するのか、単純に頭脳派であるニエルブの思考に周囲がついて来れなかっただけなのかは気になるところです。
個人的には劇場版の「闇菓子が存在しない世界」において兄妹5人の関係性が良好そうに見えたことを踏まえると、ニエルブの愛情自体に偽りはなく、それが「闇菓子の存在」によって拗れた結果、今の状態に繋がったのではないかと思います。
ショウマの存在は不幸の象徴なのか
劇場版の内容も含めてですが、どうも『ガヴ』という作品は「ショウマが存在しない世界=平和な世界」という図式を突きつけて来ますねぇ。辛辣ぅ!!
今回はニエルブとショウマの交渉が描かれましたが内容としては以下の通りです。
- ニエルブの狙い
- 大統領からストマック家を奪還したい。
- その為に最も強い力を持つショウマをストマック社長に擁立。
- ショウマに大統領を撃破させる。
- ショウマの狙い
- ストマック家から人間を守りたい。
- 権力を握れば、人間界とグラニュート世界を遮断出来る。
- ただしショウマ自身も人間界には2度と来ることが出来なくなる。
- 二人の合意内容
- ショウマが大統領を打倒する。
- 人間界とストマック世界を遮断する。
- 今までに攫った人間(まだ生存)を解放する。
劇場版では「そもそも自分が存在しない世界」において、自身の周囲に悲劇が起こらずに平和な世の中になっていましたが、テレビ本編は「これからショウマがいなくなる事によって」世界が平和になる、という展開になりそうです。
難しいのは決してショウマが存在するから不幸になる訳ではなく、あくまでも元凶は「闇菓子」であるのは間違い無いのです。しかし結果的に闇菓子を巡って起きた不幸の象徴としてショウマが存在する場面が多いのも事実で、これは非常に辛辣です。
例えばショウマの母が死亡したのは闇菓子があったが故ですが、何よりもその事実を象徴するのは闇菓子がある世界で生まれてきたショウマ自身の存在です。
劇場版にて「闇菓子が存在しない=ショウマも存在しない」が成立した以上、本編においても「ショウマが人間世界から消える=闇菓子も消える」という図式が成立します。第44話で無理矢理に劇場版キャラを登場させたのは、こうした時系列を明らかにする事で、ショウマの自尊心の低さをより鮮明にする狙いがあるのではないかと個人的には考察しています。
幸果さんが現実に向き合う
幸果さんがラキア怪人体と向き合います。第42話時点で怪人体は目撃していましたし、そもそもラキアがグラニュートである事自体は幸果も知っていました。しかし今回、真正面からラキアを目の当たりにし「ラキアは人間を襲ったのか」と幸果が問いかけます。
ラキアはかつて人間を襲った事実を認め、謝罪します。絆斗はラキアにも(弟の件等の)事情があったことを触れてフォローしますが、幸果はショックを受けてしまいます。幸果のショックはラキアに対する疑念や怒りも含まれてはいそうですが、それ以上に「自分自身の浅はかさ」に起因するものであるように思われます。
幸果はラキアの正体を知った上で共に過ごして来ましたが、その意味を深くは考えておらず純粋に居場所を提供してみんなでハッピーに過ごせれば良い、という程度の認識だったのでしょう。
しかし絆斗をはじめとする3人のライダーは厳しい背景に苦しんでおり、時にすれ違う事もありました。幸果は健気に仲を取り持ったりしていましたが、内心では「蚊帳の外」にあると自覚していたのかもしれません。それが今回で浮き彫りにされてショックを受けたのではないでしょうか。
それでも人間の為に奔走するラキアを改めて確認することで、幸果も過去との折り合いをつけて現実と向き合います。その結果が「簡単に許される事ではないけど、ラキアを応援する」という趣旨の発言に繋がるのでしょう。ただ単純にラキアの罪を水に流すのではなく、現実に起きた深い罪として受け入れつつ、一人の人間としてラキアを応援する意思表示は「浅はかさ」だった幸果自身が大きく成長したことを意味するのではないでしょうか。
今後の展開
- グラニュート世界で大統領選挙
- ランゴの動向→大統領への復讐があるか?
- ショウマがグラニュート世界へ。大統領と対決。
- ランゴと絆斗達が接触。絆斗達もグラニュート世界へ?
次回予告の「独りで全部抱え込んで、ウマショーはそれで幸せ?」という発言に全てが詰まっているように思います。今回のラキアに関連する話もビターではありましたが、真摯に罪を認めるラキアも、受け入れた上でフォローする絆斗も、ショックを受けつつもラキアと本当の意味で向き合った幸果も進む方向性としては120点です。あまりにも完璧です。
それだけに主人公であるショウマだけが「自尊心の低さ」に起因する価値判断をする場面が目立ちます。まぁショウマに関しては背負ったモノが他の登場人物とは違い過ぎるわけで、それこそ真の理解者になり得るのは「タオリン」くらいしか存在しないのかもしれません。
その一方で人間に対する愛情も強く持っているショウマですから、ますます「自分の事は後回しでいいや」の精神になっているのでしょう。長らく引っ張ってきたショウマの内心に幸果が直接向き合うという事がいよいよ物語の最終盤への突入を意味していそうです。
ラスボス予想(45話時点)
ジープ
可能性としては中程度でしょうか。今後の強化も一応は示唆されていますし。個人的にジープの変身ポーズや目の光る描写から、明確に「ショウマとの対照」を意識している印象があるので「仲間に囲まれたショウマ」VS「全てを失った・拒絶されたジープ」の構図は美しくはあります。
→第43話では着実に戦闘力が成長している描写がありましたが明確に赤ガヴには劣るようです。そんなことも知らずに強くなっている事を純粋に喜ぶジープ。少なくともニエルブがジープをどこかで見捨てる展開はありそうで、それを機に更にコンプレックスを拗らせることになりそうです。
下剋上の如く、他の怪人を見返した上で「ジープにとってのラスボスとして」ショウマが存在するという展開は非常に面白そうです。ショウマとジープの対立は「お互いがお互いにとってのラスボス」という構図になりますから、やはりシナリオとして美しいです。
ランゴ
やはり最有力候補です。井上みちるを起点にショウマの家族に関する掘り下げと並行してランゴが想うストマック家という家族についても描れそうです。そもそもランゴが何故ストマック社に拘るのか。その背景に強い家族愛があるのであれば、ショウマとの対比としてはバッチリです。ここで復活したということは塚本高史さんのスケジュールも抑えてるだろうし、よっぽどのことがなければラスボス確定でしょう。
→総集編である第44話においても明確に台詞と新規カットがあり、この点ではジープやリゼルとは別格の扱いを受けています。ブーシュが無能ゆえに殺害したという事ですが、ランゴとブーシュの意思疎通がどの程度出来ていたのかが気になります。例えばですが以下のような展開を想定してみましょう。
- ブーシュは「人間とグラニュートの共存」を望んでいた。
- しかしブーシュは口下手でランゴ達に真意を一切伝えていなかった。
- 何も知らないランゴは「父が人間優先で家族や会社を軽視している」と勘違いした。
- 闇菓子製造に消極的な父のせいで業績が悪化した。
- 「人間と父によって一族が滅びる」と懸念したランゴが父を殺害。人間に対しても憎しみを抱くようになる。
少々強引な展開かもしれませんが、ブーシュは人間のお菓子に魅了されていたんじゃないですかね。それこそデンテ叔父さんは「闇菓子より人間世界のお菓子の方が美味い」という趣旨の発言をしてますし。
そしてブーシュに対してお菓子の魅力を熱心に伝えた存在が「井上みちる」だった、という展開であれば前日談として綺麗です。その上で「最後は人間を犠牲にした闇菓子の味しか知らないランゴ」と「人間と怪人(ショウマ自身)を繋げる人間世界のお菓子の味を知ったショウマ」が決戦するという展開にも持って行けそうです。
撃破されたランゴがショウマに「分け与えられた」お菓子を初めて口にして、ブーシュの真意等を全て理解した上で「美味しいな•••」と笑みを浮かべ最期を迎える、であればラスボスの格として充分過ぎるほど魅力的なキャラクターになりそうです。
→45話時点では若干の登場に留まりましたが「ショウマとニエルブが手を組んだ」ことを把握しており「お手並み拝見といこうじゃないか」と発言しています。珍しく何か知っている…!
その上で次回では絆斗達に接触する様子なので何か狙いはありそうです。
大統領
第46話にてショウマとの対決が描かれそうです。オーバーガヴを圧倒している様子で実力はかなりのものかもしれません。でもそろそろ倒さないと尺も足りないだろうし、どうやって倒すんでしょうね。少なくともニエルブが忠誠を誓っていないのは本当の様ですし、ランゴ兄さんも虎視眈々と命を狙っていそうですが。
リゼル
第41話でジープとの関係性が少し進展したように感じます。リゼルの歪んだ感性については是非とも描いて欲しく、描き方によってはラスボスとしての格も十分にあるでしょう。ただ一方でリゼルがジープにとって徐々に大切な存在になりつつある雰囲気もあります。ジープは大切な存在を失う事で悲壮で魅力も増すキャラクターなので、最終的にはジープに愛情を伝えて先立つといった展開も見応えがありそうです。
→第42話では特に動きがありませんでした。次回で人間界に登場しますが、大統領が殺されることはあってもリゼルまで同時に殺される展開は流石に無いんじゃないでしょうか。父親が目の前で殺されたと仮定して、リゼルは悲しむのか、それとも平然としているのかは気になるところです。それこそ「家族を失って復讐に燃える主要人物達」の中で唯一、「家族に関心を持たない人物」として描くのであれば非常に印象的なキャラクターになりそうです。その上でジープにだけ何かしらの強い愛情を抱くという展開であればリゼルの人格に重厚感が出そうです。
→43話で父親との会話が描写されましたが、やはり考え方等は相性が悪い様子で、父親に対する「家族愛」というよりは「権力者」として利用している雰囲気があります。一応は馴れ馴れしく「パパ」と呼んではいますが、あくまでも権力者に取り入る手段としての振る舞いに感じます。
→45話では人間界を破壊してすぐに戦線離脱してしまいましたが、これだけでは何とも言えないです。ニエルブ以上にラスボス化の可能性が読めない存在です。
ニエルブ
第45話にてショウマと手を組み、大統領の打倒を狙うニエルブですが「闇菓子に固執しない姿勢」を見せて来ました。加えてニエルブの家族愛を「誰も信じない」という発言も気になります。
個人的な考察としては、ランゴの「ブーシュに対する無能扱い」に近しい背景があるのではないかと思います。つまりランゴが抱く家族愛には「会社繁栄=闇菓子製造」の図式が強く刷り込まれており、闇菓子製造に積極性を持たない者は信用しない、或いは敵と見なすという考え方があるのかもしれません。
もしそうであれば、ニエルブの発言もランゴの振る舞いも両方とも正として辻褄を合わせることが出来ます。「自分なりに家族のため奔走したニエルブ」が「彼の真意を認めないランゴ」に殺される展開は哀れですが、ブーシュの真意に繋げる筋書きがあるのであれば、割と現実的にあり得る気がしてならないです。
まとめ
もう十分に描き切ったやろ、と思っていたラキアが更に丁寧に深掘りされて幸果を始めとする仲間達の結束がより強まりました。しかしショウマはいない…。
流石にこの先はショウマの精神を支える話になると思いますが、これは幸果さんだけによるものではなく、主要人物みんなで助ける展開になるかもしれません。以前までは幸果さんとショウマを同時進行で描いていくのではないかと予想しておりましたが、幸果さんに関しては今回である程度は綺麗に描かれた感があるので。
むしろ取り残され気味だった幸果さんが主要人物達が直面する問題の土俵に登って来た、と解釈すべきかもしれません。絆斗とラキアと幸果が同じ土俵で足並みを揃えてショウマを救う、という展開は王道ですが、やはりこれが一番でしょう。
ガヴの主要人物は本当に全員が魅力的だから、誰か一人にショウマを委ねるのも勿体無い気がして来ました。大人向け作品ですら仮面ライダーは基本的に円滑なコミュニケーションが出来ないものなのに、『ガヴ』に関しては登場人物の出来が良すぎると改めて感じました。
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