ネタバレ注意！！
この記事は『Vシネ 仮面ライダーガヴ ギルティパルフェ』の感想記事です。個人的な感想を主とした内容に努めますが、映画本編のネタバレになる内容も含まれます。
是非鑑賞した上で記事も読んでいただけると幸いです。
必須ではないと感じました
まず作りは丁寧だと感じたし、テレビ本編に置かれた（絶妙な）伏線の回収も行われたので楽しめる要素はありました。
ただし「この映画を観ることで本編やキャラの印象が大きく変わる」ほどのインパクトは体感出来ませんでした（個人的な感想です）。
決して批判的な意見ではないのですが「ガヴの世界観を更に深掘りしたり先に進める」というより「ガヴの世界観に久しぶりに帰ってきた」という印象でしょうか。
物語自体は最終回後の内容になりますが、全体的な雰囲気は序盤～中盤に近い印象を受けました。
良くも悪くも「ガヴらしさ」を味わえる作品であり、伏線や謎について真剣に考えるより「あ～ガヴ懐かしいなぁ～」という気楽な心で観るべきだと感じました。
絆斗とリゼル
流石に予告段階で明らかでしたが主軸は「絆斗」と「リゼル」の2人です。
絆斗に関してはテレビ本編の時点で綺麗に描き切った感がありましたが、今回のVシネで更に磨きが掛かったと思います。
やはり最終回における「ジープ撃破」が心に残っている様子ではありましたが、ただ単純にこれを悔やむ訳ではなく「大人として」救える者は救いたいという発想に至るのは流石です。
そして「大人として」の大人は「かつて自身を育ててくれたライター師匠」であり、かつては復讐の原動力として存在していた師匠が「純粋な憧れ」として絆斗の中に存在しているのが素敵だと感じました。
やっぱり復讐を果たしたりすると犠牲になった人物はメッキリ忘れ去られたかのように描写されなくなりがちですが、絆斗の場合は「復讐から卒業」しつつ「犠牲になった人物からポジティブな影響を受け続けている」ことが分かり、非常に丁寧な描き方だと改めて思います。
唐突に登場した今作のラスボスに対しても、心情的な理解は示しており、本当に良いやつだなぁと思います。
ただしリゼルはなぁ…
絆斗に関しては本当に良かったと思うのですが、リゼルに関してはイマイチ消化不良な感想を抱きました。
一応は「救済された」と考えるべきなのでしょうが、なんか無個性だなぁと感じてしまったんですよね。
そもそもリゼルって「救済すべきキャラなのか？」という疑問があるんですよ。闇菓子製造にも関与しているし。
元々は価値観バグったお嬢様として登場したのであって、父親への愛情もあるのか怪しい存在だったと思うんですね。
個人的には「家族に執着する主要人物」の中で「家族に関心がない唯一の人物」としての「狂気」を期待していました。
もちろん「狂気」を全面に押し出してテレビ本編のラスボスになっても良かったと思うし、「狂気」が徐々に消えてジープへの真なる愛情に目覚める展開でも良かったと思うんです。
実際のガヴ最終回は「ジープが身を犠牲にしてリゼルを守った」にも関わらず「リゼルはジープをモノ扱い」であり、Vシネではリゼルの歪んだ感性に言及されるだろうと期待してたんですね。
お出しされたリゼルは…
Vシネで登場したリゼルは「父親がいなくなって寂しい娘」という人物像であり、一気に没個性的になった印象を受けました。
もちろん最終回時点で父親の死を嘆いていたので明らかな事実ではあったけど…。
「家族を殺された哀しみ」という内容は『ガヴ』のテーマでもあるので一概に批判は出来ませんが「それなら自分自身で何か行動をしろよ」とも思うんですよね。
私が抱く最大の違和感は「リゼルが受動的すぎる」ことなんです。結局今回も「61万円の石を食って周囲に守られただけ」でトコトン受動的なんですよ。
まぁ一応は「幸果を守るために戦う」「絆斗たちに感謝を述べる」という描写はありましたが、そりゃ流石にそうだろとしか言えないと思うんです。
個人的には「幸果に心を開いて扉探しに本気になる」or「怪人態として戦う以上はめっちゃ強い」の一方は欲しかったなぁという感想です。
両手落ちとなると「ただ守られるだけの存在」であり個人的には微妙。「お嬢様らしさ」を強調する意図があった可能性も否めませんが、それならお嬢様の「成長」を感じさせる要素が欲しかったです。
これだと「成長」というより「周囲に絆された」だけの凡庸なお嬢様キャラとして感じてしまい、個人的には消化不良です。
同じく敵側だった「ラキア」は終盤まで自らの罪に向き合い続けた訳ですから、尚更「リゼルはそれで許されて良いんか？」という違和感はあります。
ハードルが高すぎたか？
個人的に少し期待しすぎていたかもしれません。テレビ本編の『ガヴ』という作品は序盤から終盤まで最高のシナリオでしたが、最終盤になって急に微妙な展開になり、露骨にVシネを前提とした内容になった印象があります。
それこそ「マサル叔父さんとショウマの関係」なんかは深掘りする余地を残した幕引きだったし、ストマック家の過去話についても不明事項を多く残しています（ファイナルステージで一部は開示されたけど）。
それらを全て無視してテーマを「リゼル」に絞った作品を制作するとなれば、どうしても期待しちゃいます。
せめて
- 父親やジープなど気にもしてない徹底的なクズとして描く
- 復讐に燃えた状態で絆斗と泥臭い勝負を繰り広げる
- もう2度と居場所を失わないよう必死に行動する
のどれかは欲しかったなぁ。
強いて言うなら③が近いですが、あれは「幸果を守る」というより「自身の問題に幸果を巻き込まない」なので、リゼル自身の確固たる意思は読み取りにくいと感じました。
どちらかと言うと「溜まり場の少女達を必死に守るリゼル」を観たかったです。
最終回後も生存した敵キャラが「ただ新たな敵に狙われるだけ」「自身の身を守るので精一杯」だと「何故わざわざ生かしたんだ？」という疑問はどうしても残ります。
まとめ
少々批判的な感想記事になってしまいましたが、決してつまらない作品ではないと思います。てか普通に面白いです。
それこそ『オーズ10周年』なんかと比べたら天と地ほどの差があるほどに良い作品でしょう。
最近のVシネで比べるなら『ファイズ20周年』くらいの面白さはあると思いました。個人的に75点くらいでしょうか。
ただし同じ75点であっても期待感によって印象は変わると思うんですよね。ファイズの時は「まぁどうせメチャクチャやろ」という期待感で観たら想像以上に良かった訳です。
一方のガヴはテレビ本編・夏映画と100点に近い水準だった訳であり、テレビ最終盤でわざわざVシネを意識させた以上は「きっと最高のVシネなんやろなぁ」という期待感になります。
もちろん「登場人物を雑に殺す」とか「安易にグロ演出をする」という切り口ではなく「家出少女が闇で人身売買されている」という重さに「ガヴらしさ」を感じるし、その点ではファンを裏切らない真摯さがあったと思います。
全体的に「激アツな作品」ではなく「地味だけど世界観を守り抜いたオマケ作品」という印象です。
むしろ「派手すぎない演出」が「初期の隠密なグラニュートの不気味さ」を感じさせる要素にもなっており、そこは好印象です。
そもそもVシネは「ちょっとしたオマケ」程度の位置付けなので過剰な期待をする方が間違えているのかも知れないです。
でも『エターナル』みたいにVシネによって印象が劇的に変わった事例もあるからなぁ（老害）。
あくまで「ちょっとしたオマケ作品」ですが、良いところも沢山ありました！
そもそも映画特有の豪華な演出で技巧を凝らしたアクションシーンを観れる時点で2200円（チケット代）の価値は見出せます。わざわざ公開初日に観に行っても後悔はしてないです。幸果さん女神だし。
『ガヴ』という作品のエピローグとして違和感なく受け入れられる、無難で優等生的なVシネという表現に尽きます。
もっと描くべき事があるやろ！というツッコミどころもありましたが、ひとまず「ガヴの世界観にもう一度浸らせてくれる」という意味では良い映画だったと思いました。
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